本文へ移動

日本人の幸福度

◆日本人の幸福度◆

 

 さまざまな機関が世界の国民幸福度ランキングを発表していますが、日本はいずれの調査でも振るいません。中国に抜かれたとはいえ、世界第3位のGDPを誇り、インフラも他国に決して引けを取りません。なぜ、日本人の幸福度は低いのでしょうか。

 

   コロンビア大学地球研究所が発表した世界156カ国の国民幸福度調査では、トップはデンマークで、次いでノルウェー、スイス、オランダ、スウェーデン、カナダが続き、日本は43位でした。OECDの調査では、日本は21位、米政府が出資する米国の研究組織の調査でも、調査対象の約100カ国・地域中、日本は43位で、アメリカの世論調査会社ギャラップの2010年の調査では、なんと81位でした。調査期間、調査方法はさまざまですが、いずれの調査もそれぞれの国民へのアンケートが基本となっています。

 

   日本人の幸福度が低い理由について、「格差社会の弊害」「政治の貧困」「情報の氾濫」など、さまざまな議論がされています。アメリカを模範とした物質至上主義が幸福感につながらなくなったという意見もあります。多くの著書がある、ある実業家は近代建築の巨匠の「付け加えたり飾り立てたりするよりも減らしたり、シンプルにすることのほうが難しい」「より少ないということは、より豊かなことだ」という言葉を引用して、「本当に自分にとって大切なもの、幸せはなんだろうと考え、水から選ぶこと。それが幸せな人生を送れるかどうかの決定的な差」と述べています。

 

   幸せかどうかはその人の心が決めるもの。日本人の幸福度が低いのは物質至上主義が幸福感につながらなくなったという説は一理あります。高級で高額なものを手に入れて幸せだと感じてきた物質至上主義が色あせてきたのは、バブル崩壊がきっかけであったと思います。高額な株券、絵画、土地などの価値が一気に下落したバブル崩壊で、日本人は物質至上主義の脆弱さに気づきました。

 

   かつて注目を集めたブータン国民の高い幸福度が、先に上げた「より少ないということはより豊かなことだ」、意訳すれば「シンプルライフ イズ ベスト」の言葉の意味を良く表しているのではないかと思います。日本でもかつて、そのような時代がありました。物が無くても互いに助け合って生きて行き、一日が無事に終わったことを「お天とう様に感謝」し、それが幸福と感じられてきた時代が長く続きました。

 

   もっとも、一部の若い世代はとっくに「シンプルライフ イズ ベスト」に気づいています。たとえば、かつて若者は、格好が良い自動車を借金をしてまで手に入れましたが、今の若い世代はそれにさほど関心を示さなくなりました。住宅や高級なブランド品もしかりです。趣味に打ち込むなどして自分の価値観を見出し、それが満たされた時に幸福と感じる若者が増えてきています。

 

   水が半分入っているコップを見て、「まだ半分ある」と考える人のほうが、「もう半分しかない」と考える人より心豊かな人生が送れると昔から言われてきました。日本人の幸福度が低いという調査結果は「精神的な充足感」について考える良い機会を与えてくれたかもしれません。

 

 

 

・・・「山本義一のメッセージ」バックナンバーはこちら・・・

 

 

 ■最新のメッセージに戻る

TOPへ戻る