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地球沸騰の時代

山本よしかずからのメッセージ

 カーボンニュートラルの大号令のもと、EV自動車の普及が進んでいます。欧米各国や中国などは脱炭素化へ向けて期限を区切り、ガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車の販売を禁止する方針を打ち出していて、EV車の開発・生産を急ピッチで進めています。高性能が人気を博し、世界中に輸出されてきた日本車はこれからどうなるのでしょうか。


 EUは脱炭素化のために、2035年以降、ガソリンエンジン車の新車販売を禁止するとの方針を打ち出しました。水素と二酸化炭素を原料にした合成燃料を使用するエンジン車の新車販売は認めると、一部、方針転換はしましたが、EV化の流れは堅持したままです。米国カリフォルニア州、ニューヨーク州も2035年までにガソリン車の販売禁止を表明しています。このような情勢から、これまでエンジンと電池を併せ持ったハイブリッド車を中心に穏やかな脱炭素化の道を歩んできた国内メーカーにとって、EV車の開発・生産は至上命題なのです。


 欧米や中国の自動車メーカーに伍するため、国内の自動車メーカーも高性能なEV車の開発に全力を挙げています。そのために重要なのがEV車の心臓である電池の高性能化です。従来の電解液の代わりに固体電解質を使う全固体電池は充電速度が速い、走行可能距離が長い、安全性が高いなどメリットが多く、世界各国のメーカーが躍起になっていますが、出光と組んだトヨタは2027年~28年には全固体電池を実用化させて、EV車に搭載すると発表し、一歩リードしました。


 東芝が開発と製品化に成功した新型電池にも期待が集まっています。マイナス極にチタン酸リチウムという希少金属を使用するリチウムイオン電池「SCIB」は充電時間が短くて済む、寿命が長い、安全というメリットがあり、次世代の電池として注目が集まっていますが、エネルギー密度が低く、EV車に使用した際に、1回の充電で走れる距離が短いという弱点がありました。東芝は電極に鉄鋼の強度を高める添加剤として使用されているニオブチ系酸化物を使用することで、この弱点を克服しました。


 日本政府も2035年までに新車販売でEV車を100%にするという目標を掲げているのですが、「山の登り方は一つでない」(豊田章男・トヨタ自動車会長)と、日本車メーカーはEV車以外にも脱炭素化に向けてさまざまなアプローチをしています。水素と空気中の酸素を結びつけて電気を発生させる燃料電池車(FCV)もその一つで、最近では水素そのものを爆発させてエンジンを動かす水素自動車の開発が進められています。水素を作る方法は太陽光発電の電気を利用するなどいろいろありますが、牛一頭が1年に排出する糞尿で、燃料電池自動車が1万キロメートル走れる水素を発生させることができるという実証実験も行われました。


 EV車に充電する電気の70%ほどが炭酸ガスを大気中に放出する火力発電で生み出されているほか、EV車製造の際、ガソリンエンジン車の倍の炭酸ガスを排出する、充電設備をたくさん配置しなければならないなど、現状のEV車には解決しなければならない課題がたくさんありますが、日本の技術陣はかならず、カーボンニュートラルに向けてこのような隘路を切り拓くことができると確信しています。


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